惹湯報告Vol.131 『山里涼秋』

人には強い思いいれがあったり、大事にそっとして置きたい
そんな場所があると思っています。
この温泉の存在を知ったのは温泉めぐりを始める以前、
ある雑誌に詳細な地図と共に紹介されていて、入ろうと思えば
入れたのかも知れませんが何故か踏ん切りがつかず
いつのまにか10年以上の時間が経過していました。


脱穀された籾殻を焼く煙が、山に囲まれた盆地の底に薄く青く
漂っています。了承をいただく為に訪ねた精米所もフル回転、
忙しい最中なのに快く入湯の許可を頂戴しました。
『まだ時間が早ぇーし、掃除したばかりやけんお湯が溜まっちょんかな?』
『おーちょうどいい塩梅で、ゆっくり入りよ』 『・・・ありがとうございます♪』
バラック小屋にステンレスの湯船、ビールケースを足場に
コンパネを敷いただけの洗い場を前にして、飾り言葉は必要ありません。
申し訳ない一番風呂、薄暗く無頓着な浴舎。温い重曹泉があふれ、
幸せな時間が、静かにゆっくり過ぎていきました。