お昼寝マンボウの日記

温泉・花たび・お外でランチ、とにかく何でも興味ありのデベソおいさん。日々の、拙い出来事を記録しちょります。

湯めぐり・夢繰り・思い出めぐり

この場所に、ちょうど30年前住んでいた。納屋のようなお粗末な掘っ立て小屋を
借りて暮らしていた。棟つづきには温泉があった。前には駐車場兼用の野っ原が
あり、それほど車もなく近所の子供達のちょっとした遊び場になっていた。
この小屋を出て行く前日、下宿中間が集まってこの広場で、ブロックや石で組んだ
簡単な釜戸こしらえカレーをつくり、お互いに高校の卒業を祝って別れた。
僕は部屋代を安くしてもらうために、湯小屋の清掃をしたり電気番をしていた。
共同温泉なので、地区の人が入りに来る。今では考えられないけれど混浴だった。
洗面器を持って入り口の開き戸を開けようとすると、気配を察してか中からお母さんが
『あ、兄ちゃん。娘と一緒に入っちょんけん、ちょっと待っちょってなー!』


間借りしていた小屋は、当然のように今はない。カレーをつくった草ボウボウの広場も
整地され、立派な駐車場になっていた。その片隅に、新しくできたアパート専用の
共同温泉が・・・。お湯はしっかり生きていた。姿を変えて生き残っていた。


入り口のスイッチをいれると、裸電球の淡いあかりが灯る。よかった、まにあった。
今日はデッサンの授業が延びてしまい、やっと今、湯船の掃除が終わったところ。
急いでお湯をためなきゃ。あと、ゴミの片付もしなければ・・・。
『ごくろうさま』、いつもの一番湯のおばちゃんがやってきた。僕は今日も、終い湯だろうな。