超えなければいけない壁は、あまりにも高く大きい。
しかし友曰く 『 天から啓示あり、機は熟した 』 と背中を押され、恐る恐る門をたたいた。
『 しばらく・・・お待ち下さい 』 玄関先、過ぎる時間が緊張を増幅させる。
『 ばあや、どうしたの 』 穏やかな声で、清楚なお嬢様登場。
『 我ら流浪の修行者、世俗の垢をこちらの温泉で浄めさせていただきたいのですが 』
『 しもべの民とはいえ、そなたたちも同じ神の子。ゆっくりされて下さい 』 『 ・・・♪ 』
ご加護で開いた禁断の扉、その先にうっすら色づくお湯は夢心地のさづけ。
湯上がり後、別室で頂戴した冷茶のもてなしに安堵と達成感。
一湯供応への仁義、報恩感謝にも自ずと力が・・・。
帰りは出口まで受ける見送り、彼女がそっと指差す足元に猫手の置き石。
『 こんな時代だからこそ、余裕や遊び心を持ちたいものですね 』
『 ・・・恐れ入ります 』