お昼寝マンボウの日記

温泉・花たび・お外でランチ、とにかく何でも興味ありのデベソおいさん。日々の、拙い出来事を記録しちょります。

湯遍路日和

今日は『楠温泉』へお参りです。おや?ご開門まもないというのに、番台も湯船にも誰もいません。お布施を差し上げ、ぬる目のお湯にゆっくりと手足を伸ばしました。囲まれ感のある洞窟状態の浴室はゴボゴボと音が響き、浴槽にはお湯が惜しみなく注がれ、そして捨てられています。修行坊には、とても贅沢なひと時でございます・・。

(おい、おい!ばあさん、いつになったら戻ってくるの?番台のテレビつけっ放しだよ。何処へいったのかな、晩飯の買い物かい? 温泉道参拝のスタンプが欲しいんだけど)

なんと、たおやかに時間が過ぎてゆくのでしょう。何時までたっても番台のおばあさんは戻ってきません。すこしづつ、体が冷えてまいりました。湯遍路のスタンプはあきらめて、次へと腰をあげましょうか。路地を出て右に曲がり、いろは寿司の古い看板を眺めながら流川通りを横切ります。あれ?小大丸化粧品店が見当たりません。いつのまに、お店をたたんだのでしょうか。栄枯盛衰、世の移ろいは本当にはかないものですね。友人のKは、当時別府ではここでしか扱っていなかった、ほのかに甘く香るマックスファクターの男性化粧品愛好者でした。

そんなことを思い出しながら福助堂さんの先を左に、そして福田耳鼻科の手前の路地を右へ。これ抜けられるのかなって、最初は誰も戸惑うものですよね。逆から入れば頭上に小さく『梅園温泉』の看板があるけれど、こちら側には何の説明もございません。タンポポ美容室を右に覗きながら進むと、お風呂はすぐそこです。男性は左側で真中に番台の名残があり、そこかしこに個人専用の緑色の入浴札がかかっております。無断でお湯を拝借すると袋叩きです。臨時の入浴では、お布施100円を箱の中に入れてお湯をいただきましょう。おやおや、ここもずいぶん天井が低いですね。窓はあるけれど閉まっています。どうせ開けても、前のお店の壁が見えるだけですから。以前は温かったのですが、最近突きなおしたお陰で、熱いお湯がいただけるようになりました。湯からあがり、路地に出るとなぜかホッとします。閉塞感から開放されるからなのでしょうか。路地の巾が1mほどなので、長湯の後は足元にお気をつけ下さいますよう。つまずいたりすると、お向の家の塀に頭からご挨拶をしてしまいます。修行とはいえ、一日にいくつもお参りさせていただきますと、体力的に辛いと思うこともありますが、いいお湯にお会いした時はそんなことも忘れてしまうのでございます。『梅園温泉』、さすが路地裏に輝く共同温泉の星、期待を裏切ることはありませんでした。帰りにあの福助堂さんで、巡拝記念のスタンプをいただきましょう。

(先週の連休に行ったらシャッターが閉まっていた。断りもなく休まないでくれよー。出直しは、超つらいぜ。お湯をいただいた後はなおさら・・・ガクッ!)

今日は温泉道からわきにそれてもう1湯、東別府駅そばにある『東町温泉』へ参りましょう。ここの温泉には、苦い思い出がございます。このお湯をいただこうとして、車を電柱に激突させたのです。お参りには車を使いますので、駐車場の苦労は絶えません。そんな時の事故でございました。実は、知り合いから東町温泉の存続が危ういとのお言葉を頂戴しましたので、急遽参った次第です。本当に久しぶり。でもご安心下さい、お風呂もお湯も健在でした。広い洗い場のわりには、3人も入ればいっぱいの小さなタイル張りの湯船、一旦溜め置きされた源泉槽から、熱めのお湯がたっぷりと注がれています。ご一緒された地元の方にご挨拶をして、お湯をいただきました。
『ある人に聞いたんだけど、ここ無くなっちゃうの?』
と、帰り際に番台のおばあ様にお尋ねしたところ、心なしか少し強い調子で否定されました。それでも表に出て見ますれば、東別府の駅舎を含めた整備事業とでも言うのでしょうか。線路沿いの家並みはなくなりきれいに整地された土地が増え、G様のお言葉も、本当ではと思わせる風景が夕焼けに染まっていました。いつまでもこのお姿がこのままでと、願わずにはいられませんでした。

このあたりまで来れば浜脇にございます『河野』のお饅頭、『不老軒』のジャンボおはぎや、『とらや』の鯛焼きも喜ばれるのではないでしょうか。家族へのお供物として忘れずに買って帰ることにしましょう。我ながら妙案、なかなかおしゃれな思いつきでございます。湯銭よりも散財をしてしまいますが、このお土産が湯めぐりの強力な援軍となり、じわじわとボディーブローのように効いてくるはずでございます。修行中は家族とも縁を断ち、世俗を忘れて心静かにお参りしなければなりませぬ故、いろいろと気を使うものでございます。ああ・・・修行へ旅立つ際の言い訳もヨイショもずいぶん旨くなりました。合掌。