降り続く冷たい雨を逃れ迷いこんだ路地裏、
目の前のお宅でまっぱのお父さんと目が合った。『 あんた、ナンしよんのな 』
あんたこそ・・・こん寒みぃーんに裸になっち、と言いかけて止めた。
『 雨も降りよんし体が冷えたけん、温泉でん行こうかと・・・ 』
『 そんなら、ワシ方に入らんね 』 『 えーっ! いいんですか 』
『 たった今、風呂から出たばかりなんで 』
薄暗く素っ気ない浴室に剥き出しの配管、ご近所も利用される混浴自家泉。
暖かいお湯があればそれだけでいい、お父さんに感謝していただいた。
湯上り、外に出れば庭の植木に淡い梅の花。
先程は気がつかなかったのに、心が温まればそんな事にも目が向く自分がいた。