お昼寝マンボウの日記

温泉・花たび・お外でランチ、とにかく何でも興味ありのデベソおいさん。日々の、拙い出来事を記録しちょります。

御前湯今昔

芹川沿いの崖の上に建てられた、素朴な共同温泉『御前湯』に、初めて行ったのは10年以上前だっただろうか。道路から、階段を約2m程降りたところに浴舎があった。入口には長湯温泉でお馴染みの回転式扉があり、40円を投入して体で押せば、大人ひとりがこっちからあっちに行ける仕組みだった。子供が小さかったので私は息子を抱いてバーを押し、娘は隙間から向こうに送り込んだ。入口の100円両替機は壊れていて両替が出来ず、小銭が足りなくなっ
たのでミニモニのかみさんと婆さんは一人分の料金を入れ、キャーキャー言いながら楽しそうに二人で仲良く入ってしまった。

床すれすれまでにとられた窓をあけると、足元に芹川が涼しげに流れている。崖の下を見れば、温泉成分で黄土色をした堆積物が盛り上がり、廃湯がジャバジャバと滝のように落ち、そばには大きな鯉が何匹もゆうゆうと泳いでいた。

浴室の中も千枚田状態で、堆積物は赤茶や緑・薄黄色など複雑な色をしていた。ゴツゴツした床に座ると、 尻に当たりチクチクして痛かった。体に良さそうな土色をしたお湯は少しばかり熱めで、浴槽の淵からザバザバ溢れて床を洗い流していた。婆さんから呑んでも良いと聞かされていて何度か口にしてみたが、ジュジュ・ジュッワーとしたお湯はなかなか馴染めなかった。

今年、竹田市久住町・荻町・直入町にある4つの温泉施設のお湯を楽しんで、パスポートにハンコを押してもらいあわよくば抽選でプレゼントをいただこうという『おく豊後 とくとく湯誘パスポート』なるやたら長いネーミングの湯めぐり企画があり、新しくなった『御前湯』へ久しぶりに出かけてきた。

立て替えられて大勢の観光客が訪れ、すっかり長湯の人気者になってしまった事を素直に喜べばいいんだろうけど、へそ曲がりの私はごめんなさいと引いてしまいずっとご無沙汰だった。でも、お湯は昔のまま。こんな施設では珍しい木枠の窓にゆっくりと堆積物が付着し始め、一緒にお湯に入っている高校生になった息子の横顔を眺めながら、不思議な感覚の中で時間の流れを味わった。

後日、小包が届いた。開けると久住町特産のアイスクリームの詰合せであった。50人しか当たらない特賞が、おまけで連れて行った息子に当たったのである。その数日後、かみさんにも100人に当たる温泉入浴券が送られてきた。わたしだけが“スカ”だった。

くすん・・・でも、これでいいのだ。これが家庭円満の極意である)