山のへりにへばりつくよう、その温泉旅館は川沿の谷あいにあった。
何があってもお行きなさいと、みんなからそそのかされていた温泉である。
別府育ちの私には、40℃弱のぬるいお湯は正直、とーてん物足りない。
口に含んでも、何の感動もない無味無臭。こんなお湯のどこがいいのじゃい!
ところがところがじゃ、お湯とてめえの体の間に何んだろうこれ、1枚皮膜のような
もうひとつのお湯の層がある。体に触っているのが頼りなく感じるほど、ヌルトロの感触。
おまけに極微小の泡が、ぬぐってもぬぐっても密やかにまとわりついてくる。
お湯と自分の体への距離感をこんなに感じたお湯が、今まであったかな?
ウウム・なかなかやるじゃん!ネスカフェカプチーノ♪ 状態なのでごじゃった。