母の実家裏はつくり酒屋、家を出て左に曲がれば、すぐ店の入口。
菰樽から大振りの徳利へ、お使いを頼まれた分だけ注がれる。
その後、田舎の小さな酒屋は 『 いいちこ 』 を世に送り出した酒類総合醸造企業の一つに。
今では村のほとんどがそちらの敷地に取り込まれ、
バアちゃんちは約束をいただいた通りそのお宅の玄関に生まれ変わっていた。
踊り舞台がある八幡神社、クマゼミの鳴き声と村祭りは懐かしい記憶。
よく遊びに行った下の屋敷、今は住む人もいない。
2B弾が不発、その後の不始末が原因で納屋を全焼させたのは苦い思い出。
田んぼの中の一軒家、傍らに今も残る宇佐海軍航空隊の掩体壕(えんたいごう)。
ああ、あそこは絵を描く楽しみを教えていただいた若い女先生のご自宅。
幼いころの濃密な時間が詰まった村は、変わらず穏やかだったが・・・ずいぶん小さく見えた。
『 花は根に 鳥は古巣にかえるとも 人は若きにかえる事なし 』
詠み人 何某