陽が落ち、いつもの姿に戻っている別府の町を見て、何故だか安心した。
いくら周りが温泉まつりだの何だのとあおっても、この町の根っこはいつも無頓着。
つかの間暮らしたこの町がとても気になるけど、決して今まで深追いはしなかった。
一度離れた町からは、それを望んではいないと気づかされたのでつかず離れずにいた。
偶然に流れ着いた町、そして出て行った町。あの時の無垢な気持ちを手繰り寄せるように
ただの傍観者か旅行者になってしまった私は、懸命に過去を探して今日も別府へ帰る。
訪ねた山の手の共同温泉は、真っ暗で誰もいなくて自分で電気をつけドアを開ける。
脱衣カゴに着ているものを脱ぎ浴槽に体を沈めると、自分一人分のお湯があふれでた。
お湯があふれる音や様子を眺めているだけで、ここに来るまでしょっていた独りよがりの想いも
なにもかもみんな、流されてしまう気がした。また帰ってきたよと、湯船の中でポツリ。
これからも私の中での別府の町や共同温泉が、このままで変わらずにあり続けてほしいと願うのは
難しいことだろうか?